FB Paul Poiret 1 Passementrie

ファブリック(テキスタイル)ボタンでは、布や糸、テープ、リボン、ブレード、コード、フロス、ビーズ、シークイン(スパンコール)、羽毛などを様々な手工芸的な技法(織り、編み、組紐、刺繍、フェルト、レースなど)と組み合わせる。宮廷貴族の贅沢な装飾用とは異なる近代のファブリックボタンは、産業革命以降に全盛となった。ミシンの登場によってボタンホールが容易になったこともあり、より広い階層の人々に装飾ボタンを使用できる余裕も生まれ、ボタンそのものの裾野がひろがったからである。(これらの技法は帽子やバッグ、軍服の装飾やタッセルなどとも共通のものが多い。)

1900年代初頭のパリで、オートクチュールの祖と呼ばれた、ポール・ポワレの周辺のボタン。前時代のコルセットから肩で羽織るキモノ風ドレスなどで女性の体を解放し、新興のブルジョワ階級の顧客を掴み、モデルを使って仕立て屋ではないデザイナーとして流行を発信する手法はその後のパリモードを方向づけるものであった。贅沢な刺繍や糸かがり、ビーズなど、前時代の手仕事の延長的な細工であり、ヴィクトリア朝の黒ではない色糸も多用したが、実用的なモードというものではない。